食品を守る!軟包装フィルムの選定ポイント(各層のフィルムの特徴・種類)
食品にとって、包装は商品の安全性や鮮度を保つための非常に重要な要素です。スーパーやコンビニエンスストアの棚に並ぶスナック菓子、レトルト食品、冷凍食品などの多くは、「フィルムパッケージ」と呼ばれる薄いプラスチックフィルムで作られたパッケージに包まれています。
フィルムパッケージには、「軽量でプラスチックの使用量を削減できる」「袋のサイズや形状を内容物に合わせて柔軟に変更できる」といった物理的なメリットがあります。さらに最大の特長は、機能性の違う複数のフィルムを貼り合わせる(複合化・多層化する)ことで、単一のフィルムでは到底達成できない高い機能を持ったパッケージを作ることができる点にあります。
一般的な機能を持たせる層構造として、パッケージの外側から内側に向かって「基材層」「バリア層」「シーラント層(シール層)」の3つがあり、それぞれ全く異なる役割を果たしています。本コラムでは、フィルムパッケージを構成する各層の役割と一般的に使用される素材、製造工程、そして具体的な選定のケーススタディについて、分かりやすく解説していきます。

目次
基材層
基材層は、袋の最も外側に位置する、パッケージに求められる基本的な構成要素であり、全体の強度を提供する層です。商品の顔となるデザインなどの「印刷」が施されるのもこの層です。
フィルムパッケージの製造では、高速印刷の工程を通過したり、製袋時に熱を加えて袋を閉じる「ヒートシール」の際に高温の熱源(シールバー)が直接接触したりします。そのため、基材層には物理的な強度と高い耐熱性が求められ、一般的には引っ張って分子の向きを揃えた「延伸フィルム」が使用されます。この層がしっかりしていないと、包装フィルムが破れやすくなり、食品が安全に保存されません。
一般的に使用される主な素材には、以下のものがあります。ポリエチレンテレフタレート(PET)
素材が持つ高い耐熱性と寸法安定性を生かして、ヒートシールにより密封される非常に多くの包装の基材として使用されています。また透明度が高く、印刷適性に優れているため、商品の外観が重視される製品に最も向いている素材です。
- ポリアミド/ナイロン(PA / Ny)
素材としての強靭性が特に高い部類のフィルムです。耐衝撃性や耐穴あき性(ピンホール防止機能)に優れているため、重量のある液体のパッケージや、落下衝撃・突き刺しなどの機械的な強度が求められる冷凍食品などに広く用いられます。 - 二軸延伸ポリプロピレン(OPP / PP)
後述するシーラント層に使用されるポリプロピレン(PP)を縦横の二軸方向に延伸することで、透明性と強靭性を持たせたフィルムです。水蒸気バリア性を持ち、かつコストパフォーマンスに優れ安価であるため、菓子や野菜などの包装から、チルド食品のパッケージまで幅広く使用されています。
バリア層
バリア層は、基材層とシーラント層の間に位置し(※内容物によってはバリア層がない場合もあります)、賞味期限を延ばす目的で袋にバリア性を付与する層です。商品の流通から保管時に外部から侵入する酸素や湿気、光、臭気などから食品を保護するだけでなく、内部から必要な成分(水分や香りなど)の散逸を防止するなど、パッケージにおける極めて重要な機能を担います。
食品の多くは、空気中に含まれる酸素と反応することで酸化劣化します。また米菓やスナックなど乾燥した食品は、湿気に触れると風味が低下するだけでなく菌が増殖し始める原因となります。食品に含まれる油脂類は光によって劣化し、保管環境の臭いが移ってしまうことも問題です。これらを防ぐために、以下のような素材が用いられます。
- エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)
特にガスバリア性が極めて高いため、酸素や臭気から食品を守るのに非常に効果的です。金属を使用していないため「電子レンジ対応」のパッケージに組み込むことが可能です。ただし親水性の素材であるため、単体では湿気防止には不向きであり、他の防湿フィルムと組み合わせて使用されます。 - バリア性ナイロン(Ny)
基材に用いられるナイロンのバリア性の高いタイプであり、強靭さと耐熱性を兼ね備えています。ハムやソーセージなどのスキンパックや、真空包装する食品の保存に利用されます。 - 蒸着フィルム(VM)
酸化ケイ素、酸化アルミ、金属アルミなどの無機系の素材を、基材となるフィルムに薄く真空環境下で蒸着させたもので、高いガスバリア性を有します。金属アルミを蒸着したフィルムは光を遮断するため、油調した冷凍食品やスナック菓子など、油脂を多く含む商品によく使用されます。 - アルミ箔(M / AL)
金属アルミを数ミクロンから数十ミクロンに薄く箔状に圧延したもので、金属の特性を利用してガス、水蒸気、臭い、そして光まであらゆる劣化要因を完全に遮断する究極のバリア素材です。 - 塩化ビニリデン(PVDC)
家庭用の食品向けラップなどに使用される素材ですが、軟包装では基材層に塗布(コート)したフィルムをガスバリアフィルムとして用いることがあります。
シーラント層(シール層)
シーラント層は、袋の最も内側に位置し、食品に直接触れる層です。シール層同士を重ね合わせて「ヒートシール(熱圧着)」を行うことで溶着し、パッケージを完全に密封させる役割を持ちます。
熱で瞬時に溶けて接着する必要があるため、基材層とは異なり、分子が固定されていない「未延伸フィルム」が使用されます。密閉性を十分確保できなかった場合、他の層がどれほど優秀でも、隙間から空気や湿気、菌などの外部要因が侵入し、食品の品質を根本的に損なう原因となります。
- ポリエチレン(PE / LLDPEなど)
直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)などが代表的です。優れた低温シール性と耐寒性を持ち、熱をかけると低い温度で素早く確実に接着できるため、冷蔵食品や冷凍食品、液体洗剤の詰め替えパッケージなど、幅広い用途で使われています。 - ポリプロピレン(PP / CPPなど)
無延伸ポリプロピレン(CPP)などが該当します。PEよりも耐熱性に優れているため、高温での殺菌処理が必要なレトルト食品や、電子レンジ対応のパッケージなどに適しています。

フィルムパッケージができるまで
これらの異なるフィルムは、どのようにして一つのパッケージになるのでしょうか。一般的な製造工程は以下の3ステップで進みます。
- 印刷
まず、一番外側になる基材フィルムの「裏面(内側になる面)」に、商品のデザインや成分表示などを印刷します。裏面に印刷することで、フィルム自体がインクを保護し、擦れてデザインが消えるのを防ぎます。 - ラミネート(多層化)
印刷された第1フィルム(基材層)と、第2フィルム(バリア層やシーラント層)を重ね合わせます。フィルムの間に接着剤を均一に塗工し、乾燥工程を経てから、加熱したローラーで圧着してしっかりと貼り合わせます(ドライラミネート法など)。 - 製袋(せいたい):パウチなど袋物のパッケージの場合
貼り合わさって1枚の多層構造になったフィルムを、包装機械にかけて筒状や袋状に成形します。ピロー包装(背中と上下をシールする形)や、三方シール袋など、用途に合わせた形に加工され、中に食品が充填されます。

フィルムの選び方のポイント
包装フィルムを選ぶ際には、いくつかのポイントを考慮する必要があります。
第一に、実際に入れる「食品の特性」を理解することです。酸素や湿気に敏感な製品には、バリア性の高い層構成が必要です。ここで述べるバリア性や強度は、フィルム各層の「総合的な性能」で決まります。
第二に、商品の流通条件や保管温度(常温、チルド、冷凍など)といった「物流面」への配慮です。
第三に、フィルムの「厚さ」です。一般的にフィルムは厚いほど特性が強く表れます。バリア層を厚くすれば酸素透過率が下がり、シーラント層を厚くすればシール強度(剥離に対する強さ)が上がります。コストとのバランスを見極め、最適な構成を選定します。
【豆知識:プラマークの見方】
市販の商品に記載されている「プラマーク」の近くを見ると、「PE, PA」のように使用されている材質が表示されています。2種類以上の材質で構成されている場合、重量で最も割合の多い材質に「下線」が引いてあります。スーパーで商品を手にした際は、ぜひチェックしてみてください。

ケーススタディ:包装フィルムの選定例
層構成の組み合わせによって、どのようなパッケージが生まれるのか、具体的な5つの選定例をご紹介します。
① レトルトパウチ(カレーやパスタソースなど)
【層構成】PET(12μm) / アルミ箔(9μm) / 特殊CPP(60μm)
レトルト食品は、袋に詰めた後に120℃以上の高温高圧で殺菌処理を行います。外側の基材には耐熱性に優れたPETを使用し、中間のバリア層には光と酸素を完全に遮断して長期の常温保存を可能にするアルミ箔を採用。そして内側のシーラント層には、高温殺菌に耐えられる耐熱性の高い特殊なポリプロピレン(CPP)を使用しています。

② 詰め替え用パウチ(液体洗剤やシャンプーなど)
【層構成】ナイロン(15μm) / LLDPE(120μm)
重量のある液体を入れるため、落としたときの衝撃で袋が破れないことが最優先されます。そのため、基材層には耐衝撃性と強靭性に極めて優れたナイロンを使用。バリア層は設けず、内側にはシール強度が強く、柔軟性のある厚手(120μm)のポリエチレン(LLDPE)を貼り合わせた2層構造で、物理的な耐久性を極限まで高めています。

③ 米菓・スナック菓子(おせんべいやポテトチップスなど)
【層構成】OPP(20μm) / CPP(30μm)
おせんべいなどの乾燥食品にとって最大の敵は「湿気」です。基材層には、水蒸気を通しにくく、透明でパリッとした質感の二軸延伸ポリプロピレン(OPP)を採用。内側のシーラント層にも同じくポリプロピレン系のCPPを使い、防湿性に特化した安価で効果的な構成にしています。(ポテトチップスなど油分の多いものは、光や酸素を防ぐために間にアルミ蒸着フィルムを挟む構成がとられます)

④ チョコレートメーカーの鮮度保持パッケージ
あるチョコレートメーカーは、サプライチェーン全体での風味劣化を防ぐため、シーラント層にCPPを選定し、バリア層としてガスバリア性の高い「EVOH」を採用しました。EVOHにより酸素の侵入とチョコレートの繊細な香りの散逸を同時に防ぎ、賞味期限を最大限延ばすことで、顧客から高い評価を得ています。
⑤ 電子レンジ対応自動蒸通フィルム「スマートスチーム」(大和製罐株式会社)
近年需要が高まる冷凍・チルドのレンジアップ食品向けに開発された革新的なフィルムパッケージです。
電子レンジ加熱時に袋が破裂するのを防ぐため、従来は袋の一部を開封(ちょい開け)してから温める必要がありましたが、このフィルムは「密封したまま」レンジ調理が可能です。
最大のポイントは、基材層(PETやナイロンなどの二軸延伸フィルム)にのみ、線状に強度が低い状態にさせる特殊な加工を施している点です。中間のバリア層や内側のシーラント層(未延伸フィルム)は加工されず、一切の穴あけや切断などは行っていません。
そのため、流通時やレンジ加熱前は完全な密封状態を保ち、高いガスバリア性を維持して食品の劣化を防ぎます。電子レンジで加熱し内圧が高まった時に初めて、加工された基材層と未加工層の「伸度(伸びやすさ)の違い」によってフィルムが局所的に破断し、微小な蒸気口が自動で形成されるという、物理的特性を巧みに応用した高度な設計となっています。
まとめ
この記事では、フィルムパッケージの層構造である「基材層」「バリア層」「シーラント層」について、それぞれの役割と一般的に使用される素材、製造工程を解説しました。
私たちが何気なく開けている薄いフィルムの裏側には、食品の鮮度と安全性を守るための綿密な計算と、多様なプラスチック素材の最適な組み合わせ(多層化)が隠されています。内容物の特性や流通環境を理解し、各層の役割を的確に選定・設計することが、商品の価値を大きく左右します。
今後、この記事で学んだポイントを参考にし、自社製品の包装フィルムの選び方を見直してみてください。正しい選定は、商品の魅力を最大限に引き出し、消費者の信頼を獲得する強力な一助となることでしょう。



