
スマートスチーム®の開口面積と水分減少量の関係(前半)〜電子レンジの出力で変わる蒸気発生の秘密〜
近年、私たちの食のスタイルは大きく変化しています。単身世帯や共働き家庭の増加、そして高齢化などの社会的背景もあり、スーパーやコンビニの店頭には、数え切れないほどの「電子レンジ調理対応食品」が並ぶようになりました。買ってきたら冷蔵庫や冷凍庫に入れておき、食べたい時にすぐ温められるチルド食品や冷凍食品は、火を使わずに済む手軽さから、忙しい現代人の食卓に欠かせない存在として市場を大きく成長させています。
しかし、お鍋やフライパンを使わないで済むという最高の利便性の一方で、電子レンジ調理ならではの特有の悩みも存在します。それは「温めている間のパッケージの破裂リスク」です。
食品を密閉された袋のまま電子レンジで加熱すると、マイクロ波によって食品内部の水分が急速に熱せられ、水蒸気へと変わります。水蒸気は体積が大きいため、逃げ場のない袋の内部はパンパンに膨らみ、内圧が限界を超えると、やがて大きな爆発音とともに袋が破裂してしまいます。破裂の衝撃で中身が庫内に飛び散ってしまい、レンジの掃除という余計な家事が発生するだけでなく、高温の蒸気や内容物による火傷の危険すらあるのです。
従来技術「ちょい開け」のジレンマと、革新的な「スマートスチーム®」
こうした破裂のトラブルを防ぐため、従来の電子レンジ対応食品の多くは「温める前に、袋の端を少しハサミで切る」あるいは「点線まで少し開ける」という、いわゆる「ちょい開け」という方法を採用してきました。
しかし、このちょい開けにはいくつかのデメリットがあります。まず、温める前にわざわざ手で開けるという動作自体が少し面倒です。さらに、コンビニで温めてもらってから自宅やオフィスへ持ち帰る途中で、開けた口からうっかり内容物の汁がこぼれてしまったり、逆に外から異物が混入してしまったりするリスクがありました。また、最初から口が開いているため、温めている最中にそこから蒸気がどんどん逃げてしまい、容器の側面と中央で温度差が生じる「加熱ムラ(温かいところと冷たいところができる現象)」が起きやすいという欠点も抱えていました。
そんなちょい開けのジレンマを根本から解決するために、大和製罐が開発したのが、自動蒸気抜き機能を持った魔法のパッケージ「スマートスチーム®」です。
このパッケージは、温める前の事前の開封が一切不要です。密封状態のまま電子レンジに入れて加熱すると、内部の圧力が高まった絶妙なタイミングで、フィルムに施された特殊な加工部分だけが自動的に開口し、微小な蒸気穴から安全に蒸気を逃がしてくれます。蒸気が一気に抜けず袋の中に適度にこもるため、食品全体がムラなく均一に温まり、結果として電子レンジでの調理時間そのものを短縮できるという素晴らしい効果をもたらしました。
スマートスチームは、平らなパウチや、底があって自立するスタンディングパウチ、さらにはプラスチック容器のフタ(トップシール)まで、あらゆる形状のパッケージに使うことができます。また、食品メーカーにとっても、既存の包装機械を改造することなくそのまま利用できるため、導入しやすいという大きなメリットがあります。
家庭用レンジとコンビニの業務用レンジの「出力」の壁
さて、ここで少し視点を変えて、私たちが普段使っている「電子レンジのパワー(出力)」について考えてみましょう。
ご家庭のキッチンにある一般的な電子レンジは、500W、600W、高くても1000W程度の出力が主流です。一方、コンビニエンスストアのレジ奥などに置いてある銀色の業務用レンジは、1500W〜1800Wという非常に高い出力を持っています。
出力が高い業務用レンジを使えば、お弁当やお惣菜をあっという間にアツアツに温めることができます。お昼休みの限られた時間にはとても助かりますよね。しかし、短時間で一気に熱が加わるということは、それだけ食品の水分が極めて短い時間で急激に蒸発し、凄まじい勢いで大量の水蒸気が発生することを意味します。
大和製罐の開発チームは、この出力の違いが水分の蒸発にどう影響するかを確かめるため、水温5℃の冷たい水150gを容器に入れ、調理時間を180秒に固定して、レンジの出力ごとに蒸発して減った水の量(水分減少量)を測定する実験を行いました。
その結果、予想通り「レンジの出力(ワット数)が高くなればなるほど、水分の減少量がはっきりと大きくなる」ことが確認されました。
つまり、出力が高い業務用レンジで温める時は、袋の中の圧力も急激に高まるため、「より速く、より勢いよく蒸気を逃がす仕組み」がパッケージに求められるのです。もし蒸気を逃がす穴が小さすぎれば、内圧の上昇に耐えきれずに破裂してしまいます。
圧力に合わせて穴の大きさが自動で変わる!?
スマートスチームの素晴らしいところは、この過酷な「業務用レンジの出力の違い」にも賢く対応し、決して破裂しない点にあります。
家庭用の500Wで温めた時と、業務用の1600Wで温めた時の「自動で開いた蒸気穴の大きさ(開口面積)」を詳しく比べてみると、水分の蒸発が激しい1600Wの時の方が、蒸気穴が自然と大きく広がることが確認されました。
内部の圧力に合わせて穴の大きさがフレキシブルに変化し、袋が破裂しないように過剰な水蒸気を安全に逃がしつつ、おいしく温めるために必要な圧力は袋の中にしっかりキープする。スマートスチームは、そんな絶妙なバランスを自動で保っているのです。
では、この「自動で開く穴の大きさ」は、一体どんな条件によって決定づけられているのでしょうか?
続く(後半)の記事では、実際にお店に並ぶ多種多様な食品を使った実験から見えてきた、蒸気穴が形成されるメカニズムの意外な真実に迫ります!



