
スマートスチーム®の開口面積と水分減少量の関係(後半)〜穴の大きさを決める「瞬間的な蒸気の勢い」〜
(前半)の記事では、電子レンジの出力(ワット数)が高くなるほど食品から蒸発する水分が多くなり、袋内の圧力が高まること。そして、事前の開封(ちょい開け)がいらない自動蒸気抜き包材「スマートスチーム®」は、その圧力に合わせて自動で蒸気穴の大きさを変え、過酷な業務用レンジでの加熱でも安全に蒸気を逃がしていることをご紹介しました。
しかし、ひとたびスーパーやコンビニの売り場を見渡せば、そこに並ぶレンジアップ商品は実に多様です。スープやシチューのような「液体」メインのものから、ハンバーグや野菜などの「固形物」、あるいはあんかけやパスタのように「固形物と液体が混ざったもの」まで、その形態はさまざまです。
当然ながら、食品の種類によって表面積や温まりやすさは異なりますし、メーカーが「この温度で食べてほしい」と狙う温度帯も、パッケージに記載されている「電子レンジの指定調理時間」も商品ごとにバラバラです。
では、スマートスチームに自然と開く「蒸気穴の大きさ(開口面積)」は、これら食品の種類や状態の違いによってどのように変化するのでしょうか?大和製罐の開発チームは、この謎を解き明かすためにさらなる検証へと乗り出しました。
「減った水分の総量」と「穴の大きさ」は関係ない!?
開発チームは当初、非常にシンプルな一つの仮説を立てていました。それは、「レンジ調理の初めから終わりまでに蒸発した水分の総量(全体の水分減少量)が多ければ多いほど、袋を開こうとする水蒸気のパワーが強くなり、結果として蒸気穴も大きく開くのではないか?」という予測です。
そこで、実際にお店で売られているさまざまな形態の商品をスマートスチームで包み、水分の蒸発が激しい業務用の高出力レンジ(1600W)で、それぞれの指定時間通りに加熱してみました。そして、調理前後の重さを量って「水分の減少量」を割り出し、調理後の「穴の大きさ」と比較してみたのです。
ところが、実験データをグラフにプロットしてみると、研究者たちも驚く意外な事実が判明しました。
「蒸発した水分の総量」と「穴の大きさ」には、ほとんど関連性(相関性)が見られなかったのです。
この事実をさらに裏付けるため、開発チームはもっとシンプルな実験を行いました。一定量(50g)の水を、同じ高出力レンジで「30秒間」温めた時と、「60秒間」温めた時の比較です。
当然ながら、長く温めた60秒間の方が、水分の減少量は圧倒的に多くなります(30秒では6.0gの減少、60秒では17.4gの減少)。しかし、なんと袋に開いた蒸気穴の大きさは、30秒でも60秒でも「同等の大きさ」だったのです!
この結果から、穴を大きく引き伸ばしている真の原因は、温め終わるまでに失われた「全体の水分の量」ではないことがはっきりとわかりました。
穴の大きさを決めていたのは「1秒あたりの瞬間的な蒸気の勢い」だった!
では、水分の総量ではないとすれば、一体何が穴の大きさを決定づけているのでしょうか?
開発チームは、レンジ加熱中の「水分の減り方」のプロセスをさらに細かく観察しました。出力1600Wで時間を変えながら水を温めてみたところ、水が沸騰した後は、電子レンジの調理時間が長くなるのに比例して、一定のペースで水分が蒸発し続けていることが確認されました。
ここでチームは、新たな仮説を導き出します。「重要なのは、長々と蒸発し続ける水蒸気の全体量ではなく、**穴が開いている最中に、1秒あたりどれくらいの勢いで水分が激しく蒸発しているか(瞬間的な水分減少量)**なのではないか?」という仮説です。
しかし、実際の食品を使った実験では、お肉や野菜などの固形物が含まれているため、「水のようにポコポコと泡立つわかりやすい沸騰」がいつ始まったのかを見極めるのは非常に困難です。
そこで開発チームは、「袋がパンパンに膨らんで、十分な内圧がかかり、ポンッと最初の蒸気穴が開いた瞬間」を、実質的な沸騰のスタート地点(沸騰開始時間)と設定しました。
そして、調理が終わるまでのトータルの「水分減少量」を、穴が開いてから調理終了までの「秒数」で割り算し、**「穴が開いた後、1秒間でどれだけの水分が蒸発したか(瞬間的水分減少量)」**をすべての商品で算出したのです。
その算出した数値を、パッケージに開いた穴の大きさと照らし合わせてグラフにしてみると……結果はビンゴでした!
1秒あたりの水分の蒸発量(瞬間的水分減少量)が多い食品ほど、蒸気穴が大きく開くという、一直線に伸びる非常に強い関連性(相関関係)が見事に証明されたのです。
つまり、スマートスチームの穴の大きさをコントロールしていたのは、長々と出続ける水蒸気の「総量」ではなく、一瞬一瞬に押し寄せる「水蒸気の勢い(発生スピード)」だったのです。
科学の力で、すべての食品に安全と最適なおいしさを
コンビニなどに置かれている業務用の高出力電子レンジでは、低出力の家庭用レンジに比べて発生する水分減少量が多く、それに伴って袋内部の圧力上昇も急激になります。もし蒸気を逃がす穴の大きさが足りなければ、より大きな爆発音や衝撃を伴う破裂事故につながってしまいます。そのため、過酷な高出力条件でも絶対に破裂しない確実な蒸気抜きの仕組みが不可欠です。
今回、食品ごとに必要な開口面積が異なる理由が解明され、「蒸気穴の大きさに影響を与えるのは、瞬間的な水蒸気の勢いである」という科学的な法則が導き出されたことは、パッケージ開発において極めて大きな前進です。
このメカニズムの法則を使えば、水分の多いスープでも、油分の多いお惣菜でも、どんな食品に対しても「この商品が沸騰したときの蒸気の勢いなら、この加工デザインにすれば絶対に破裂せず、かつスチーム効果で一番おいしく温まる」という、完璧な予測とミリ単位の設計が可能になるからです。
大和製罐では、今回得られた貴重な知見を最大限に活かし、チルド保存や冷凍保存といった温度帯の違い、トレーの有無、そして何より多種多様な内容物の違いに柔軟に対応できる「スマートスチーム®」の開発をこれからも進めていきます。
お店でスマートスチームのパッケージを見かけたら、ぜひそのフィルムの裏側で働いている「蒸気と圧力の緻密な科学」を想像しながら、おいしい食事を楽しんでみてくださいね!



